著作権表示について―白田秀彰



※inflorescencia=inf.  白田秀彰先生=白田

CCなどのライセンスは今後普及すると思うか?

inf. はい、では最後に「CC*1などのライセンスは今後普及すると思うか?」

白田 えっとね。あのー「白黒はっきりさせなきゃいけない」っていう風に思っている、法律圏の人々・・・。うーん。アメリカ人がそうだと思えないんだけども、要するにまあ、仮定の話で、白黒をわりとはっきりさせた方が良いっていう法構造を取ってるような、その他法文化があるエリアでは、CCは流行ると思います。

inf. はい。

白田 つまり「勝手に使ってくれ!」っていう意思表明をしないとダメだっていうさー。コンセンサスがまずあれば流行ると思うけど、日本みたいになんか・・・。

inf. うやむやな感じ(笑)

白田 うやむやな感じで「あるから使っていーじゃん!」とか「ちょっと借りてきちゃえ」っていうカルチャーがベースにあると、クリエイティブ・コモンズのメリット自体があまり明確にならない。

inf. あー。

白田 だからそういう意味でいくとね、権利者のみなさんが著作権をガンガン強化して、で、ガンガン啓蒙して、みんな小学生あたりが「ちょさくけんしんがいはいけないとおもいます」みたいなさ。

inf. あはは!

白田 そういう風になってきたときに、CCの意味が出てくる。だからまさに、光が強くなると陰が濃くなるっていうのと同じで・・・。

inf. では、今の日本の「(他人の作品だけど)いいやー使っちゃえー」みたいな土壌・文化だと、フェアユースの方が可能性があると。

白田 で、たぶん権利者のみなさんが困ってるっていうのは・・・フェアユース入れても良いと思うんだけどね、フェアユース入れると、これがまた変な風に誤解されちゃって、結局うやむやになるっていうのを怖がってるんだと思うのね。結論から言うと、現在の日本の法構造は、ぐずぐずであるっていう国民性を基に作られている。ぐすぐずの国民性の上に厳しい法律を置いて、これがうまい運用の下にかろうじてバランスを保っているっていうね・・・。

inf. ああ。なるほど。

白田 だからそう考えると、ぐずぐずになってる利用者のなかで、例えば、CD-Rが普及したりとか、Winny ができたりするなかで、実行できないことを百も承知の上で権利強化を叫んでいると。

inf. それは・・・何だろ。待ち合わせ時間を普通より1時間早く設定しておいて、でも遅刻30分してくるだろうけど、「まあ1時間おいときゃ大丈夫だろう」みたいな、そういう感じですか(笑)

白田 そうそう(笑)まさに日本のサークルがそうでしょう?

inf. はい(笑)

白田 で、これでさー。すべての国民がさ、ドイツ人みたいにね、1分でも遅れたら文句言うような国民性だったら、それはもう、時間かっきり言わないと困るよ。どうせさー、30分遅れて来るんだから1時間前にする。で、自分も遅れていくっていう文化的土壌があった場合には、あんまりうまくいかないかなー。

inf. そうですか〜。

白田 でね、そう言っちゃうと、日本人がそもそも法的な思考になじんでないんじゃないかって言うね・・・。

inf. あ。そういう国民性をたたきなおさないと(法律の運用が)できないと?

白田 いや、国民性をたたきなおすのは、実は間違いであって、日本に応じたルールメイキングって、今度考えなきゃいけなくて、で、そういう意味でいくと日本における知財のルール作りってやつはね、どっから立ち上げるかっていうと・・・。

inf. はい。

白田 これね、やっぱネットの観察とコミケの状況を考えて、実際にユーザーレベルで、そして現場で、例えば、ミュージシャンたちが著作権知ってるわけないじゃん。ああいう人たちが。

inf. はは!

白田 何か「ふふふ〜ん♪」って聴いてさ「お!このフレーズいただき!」って自分の曲に使っちゃったりするから、洋楽そっくりの邦楽ができる。

inf. まあ、そうですよね(笑)

白田 そういう現場の状況をありのままに見て、では、そういうありのままの状況が、アンフェアな社会状態をもたらさないようにするルールメイキングは何かな〜って。社会学から法社会学、さらに法学へっていう。ほんとう言うとそういうステップ踏まなきゃいけないの。今の著作権システムっていうのは、アメリカとかフランスとかドイツとかの国民性に合わせたシステムを丸ごと持ってきてるから、話がおかしいわけで・・・。

inf. あはは!

白田 まずは日本の社会において、知財なるものがどういう風に使われて運用されているのかを見て、それが望ましくない社会状況、例えば、その、権利者がね、実際に創作活動を行っている人にお金が戻ってこないっていう状況を是正するには、どういう手がとれるのかっていうことを、考えるっていうやり方をしないと・・・。もう、いつまでたってもね、なんか天竺の話をするようなことになっちゃうの。

inf. 天竺・・・(笑)では、そんなこと言ってないでコミケに行ってみろ、と(笑)

白田 そうそう!ネットで何をやってるかとか、国民が何をやってるかっていう見てみろ、みたいなさ。で、そういうアプローチをわりとちゃんとやってるのが、アメリカの法と経済学の人たち。彼らはやってるから、統計上はこう・・・だって。

inf. あー。確かに日本の法律学者は経済に疎いかもしれませんね。そんなに条文解釈してて・・・実際の経済状態を見てみろって・・・。

白田 私が今のところ信じているのは、アメリカの法と経済学やってる人たちの、知財に関する理論。これっていうのは、少なくともアメリカの社会状況をベースにして、こういう制度にした方が妥当だって言ってる。私はその思考法だけ信用してて、もう何か天竺の話については聞き流すことにしている。

inf. あはは!

白田 というわけで、このへんの質問でいくと以上のような感じということで・・・。何か他にある?

inf. いえ、ありません。お疲れのところわざわざありがとうございました!

白田 お疲れ様です。





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